障がいのある人と共に過ごしてゆくために、知っておきたい法律がいくつかあります。
中でも「共に働く」ことになった以上は「知らない」では済まされない重要な法律もあります。
「自立支援給付」「地域生活支援事業」「補装具」「自立支援医療」「障害福祉計画」などを規定
共生社会の実現を目指し、障害者の自立および社会参画の支援のための施策に関する基本原則などを規定
「更生援護」「身体障害者更生相談所」「身体障害者福祉司」「身体障害者社会参加支援施設」などを規定
「更生援護」「知的障害者更生相談所」「知的障害者福祉司」などを規定
「精神保健福祉センター」「措置入院・医療保護入院等」「精神障害者保健福祉手帳」などを規定
「発達障害の早期発見」「発達障害者の支援」「発達障害者支援センター」などを規定
児童福祉法 | 1947年公布 「児童福祉施設」「児童相談所」「児童福祉司」「児童委員」「保育士」などのほか障がいのある児童に関連する制度・事業なども規定されている |
社会福祉法 | 1951年公布 「福祉事務所」「社会福祉法人」「社会福祉事業」「社会福祉協議会」などを規定 |
老人福祉法 | 1963年公布 「老人福祉施設」「福祉の措置」「老人福祉計画」「有料老人ホーム」などを規定 |
母子及び父子並びに 寡婦福祉法 |
1964年公布 「福祉の措置」「母子福祉施設」「福祉資金貸付」などを規定 |
生活保護法 | 1950年公布 低所得者を対象に「保護の種類」「保護の方法」「保護施設」などを規定 |
障害者雇用促進法により、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める障がいのある人の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。民間企業の場合、2024年年4月から法定雇用率は2.5%と定められており、従業員を40.0人以上雇用している事業主は、障がいのある人を1人以上雇用しなければならない計算になります。自社に義務付けられた障害者の雇用数(法定雇用障害者数)は、下記の計算で求められます。
新規雇い入れから3年以内、または2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保険福祉手帳を取得した場合
もしも、雇用すべき障害のある方の人数が2人なら、「常時雇用労働者2人」「短時間労働者2人と常時雇用労働者1人」「常時雇用の重度身体障害者1人」といった雇い方が考えられます。
(1)一定規模の企業等に雇用を義務付ける、法定雇用率の根拠法です。
2024年4月以降に常用雇用者数40.0人以上の民間企業に対する法定雇用率が2.5%となりました。
(国、地方公共団体、特殊法人などは2.8%。都道府県等の教育委員会に関しては2024年4月1日から2.7%)
(2)納付金制度の根拠法でもあります。
(3)企業名の公表がありえます。
雇用義務のある事業主は毎年6月1日時点の雇用状況をハローワークに報告することなっています。
(通称「ロクイチ調査」)
未達の度合いが一定条件以上になると所轄のハローワークより雇い入れ計画作成を命じられます。
計画通りの雇い入れが進んでいないと計画の適正実施を勧告されます。
さらに設定される「特別指導期間」に公表を前提とした指導がなされて改善されない場合に企業名が公表されることになります。
※ 各企業ではコンプライアンス(法令等遵守)が標榜されています。
この法定雇用率についても、納付金を収めているから許される、社名公表もされないから企業イメージ的にも大丈夫、というわけではないと考えま
す。「法律の義務を満たしていない」ことは、立派な「法令違反」です。背に腹は代えられない「諸事情」は誰にもあるわけですが、是非、「コンプライ
アンス違反」とならないよう努力を続けてゆきたいものです。
1960年 | 身体障害者雇用促進法」制定。法定雇用率(民間企業)は1.1%。しかも努力義務。 |
1976年 | 身体障害者の雇用が事業主の義務となる。(法定雇用率1.5%)。 <エピソード> 義務化の前に、霞が関の担当官僚諸氏が別府市亀川の日本初の福祉工場(現在の)オムロン太陽(1972年設立)を訪問。中村裕博士(太陽の家創 始者)に、障がいある人の就労に問題がないことを確認した後に、法改正となったとのエピソードが残っています。 |
1987年 | 「障害者の雇用の促進等に関する法律」に改称。 知的障害者も適用対象となる。(法定雇用率1.6%) |
1997年 | 知的障害者の雇用も事業主の義務となる。(法定雇用率1.8%) |
2006年 | 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)である労働者及び 短時間労働者(1週間の所定労働時間が通常の労働者のそれと比較して短く、かつ30時間未満である常時雇用する労働者)も対象となる。 |
2013年 | 法定雇用率2.0% |
2018年 | 法定雇用率の算定基礎に、精神障害者を加える改正法が施行。 精神障害者の雇用も事業主の義務となる。法定雇用率2.2%。 |
2021年3月 | 法定雇用率2.3%へ。 |
2024年4月 | 法定雇用率2.5%へ。 |
常時雇用している労働者数が100名をこえる事業主で法定の雇用率が未達の場合は不足者数1人につき月額5万円の「障害者雇用納付金」を納付しなければなりません
厚生労働省HP:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html
高齢者・障害・求職者雇用支援機構HP:
https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html
さらに毎年6月1日時点における雇用状況が以下のいずれかの条件に該当する企業は「指導対象企業」に選定されることとなります
a)実雇用数が前年の全国平均未満、かつ不足数が5人以上
b)不足数が10人以上
c)法定雇用数が3人または4人で実雇用数0人(雇用率0%)
「指導対象企業」に選定されると、所轄のハローワークより「雇入れ計画書」の作成が命令され、その「実施状況の報告」を求められます。
計画通りの雇入れが進まないと、「適正実施の勧告」がなされ、公表を前提として、集中的な雇用率達成指導がなされる「特別指導期間」が設定されます。
特別指導期間終了後の1月1日現在で、前年の全国平均実雇用率未満の場合、年度末に厚労省のHPより社名が公表されることになります
上記はあくまで公表時点のことですが、その後どんなに雇用実態が改善しても、この「社名公表」だけは存続し続けてしまうことに、十分に留意することが必要です。
罰金とは別に、法定雇用率を達成していない事業主からは「障害者雇用納付金」を徴収する制度があります。
障害のある人を雇用するとき、職場環境の整備、特別の雇用管理などが必要となり、事業主に経済的負担が発生することがあります。このため納付金の目的は罰金ではなく、法定雇用率を達成している事業主と達成していない事業主との間に発生する経済的負担の差を調整することです。
法定雇用率を超えて対象障害者を雇用している事業主には「障害者雇用調整金」や「報奨金」、各種の助成金が支給されます。納付金は、これらの資金として活用されています。
障害者雇用納付金制度の対象は、常時雇用労働者数が101人以上の事業主です(2019年3月時点)。国の機関の場合は納付金を納める代わりに、予算を削減する仕組みが今後導入される見通しです。
「合理的な配慮の提供」については障害者から意思の表明があった場合、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮をすることを行政機
関には義務、事業者には努力義務、としています。
具体的な合理的配慮の事例については以下をご参照ください。
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/index.html
※現在企業等では2019年5月に成立した改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)に対応すべく、(大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月から施行)いろいろな対策が取られていることと思います。
上述の「障害者虐待防止法の心理的虐待」をみると、障がい者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応、その他の障がい者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこととされていて、「パワハラ」と類似する点があることに注意が必要かと思います。
すなわち、不適切な行為を受けた人が「障がいのある人」だった場合、(通称)パワハラ防止法に該当するばかりでなく「障害者虐待防止法」に該当する可能性があるということなのです。
(いわゆる「セクハラ」の被行為者が「障がいのある人」だった場合、同じように「障害者虐待防止法」の性的虐待に該当する可能性も無視できません)
いずれにせよ、障がいのある人もない人も、その尊厳を害することのないようにしなければならないことは言うまでもありません。
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